DIOはハーミットパープルを使えるのか?/Why can DIO use Hermit Purple?
さて、今回は第3部初期において、打倒DIOのためにエジプトへ向かうことを決めたジョセフと承太郎に対して、DIOがハーミットパープルのような茨のスタンドを出しながら念写したシーンについて考えていきます。
DIOがジョセフの探知を逆探知したかのような、このシーン。
なぜDIOはザ・ワールドとは別の能力を発動しているのか?
DIOはスタンドを2つ持っているのか?
考察します。
世界22は全てのスタンド能力を併せ持つ?
第3部連載時、おそらくDIOのザ・ワールドの能力は決まっていなかったと思われる。
DIOのスタンド名がザ・ワールドと確定していなかった時、世界22(ワールド22)と花京院から呼称されている。
これは噂レベルで、参照元が不明であるが、この時点ではまだザ・ワールドの能力は「時を止める」能力ではなく、暫定的に「すべてのスタンド能力が使える」能力だった、という説がある。
第3部以降の世界が広がることが確定しておらず、スタンド能力がまだタロットカード分しか出ない頃であれば確かにありそうな話である。
荒木先生はラスボスの能力はすごく強くするというポリシーがあるが、その内容はいつ変えても良いという柔軟性を持っているので、最初は全ての能力を使える能力だったというのはあり得なくはない。
現にハーミットパープルのような能力で(以降ジョセフのハーミットパープルと分けるため、仮称ハーミットパープルと呼称する)の念写は使っているので、荒木先生からの発言は何もないにしても、ファンの間ではまことしやかに囁かれた説だ。
しかし、荒木先生自身も当時のことを忘れている可能性もあるため、なかなかこの説の確認はされていない(笑)。
波紋の呼吸がハーミットパープルの源泉
もう一つ、仮称ハーミットパープルについて答えに辿り着くヒントが荒木先生自身から語られている。
そのコメントを以下に引用する。
ジョセフのスタンド「隠者の紫」。
その能力は念写や念聴といったサポート的なもの。
かつての主人公ながら、攻撃主体の能力にしなかったのは、先に説明した「ナビゲーター」という役割に沿わせたからです。
案内役に必要不可欠な世界中とアクセスして情報を得る「ライン」。
電線やネットワークケーブルがイメージの発想です。
カメラに繋げば写真がデレビに繋げば映像が出る…その「ライン」がスタンドのイバラの蔓という訳なんです。
それともうひとつ、このイバラの蔓の形はジョセフが波紋使いだったこととも関係しています。
僕にとって「超能力を絵で可視化する」ことは「ジョジョ」連載当初からの目的でした。
波紋に代わるスタンドも同じ概念で考えていたので、ジョセフを再び登場させる際、第3部のスタンドという設定から波紋を可視化するとどうなるのかなと思ったんですね。
波紋は呼吸法によって全身を伝わる生命エネルギー。
その具体的なビジュアルが全身に巻き付くようなあのイバラの蔓ということなんです。
もし承太郎たちスタンド使いが第2部の時代にタイムスリップしたら、若いジョセフの体に50年後と同じような「隠者の紫」が見えるんじゃないかと思います。
(ジョジョニウム9巻/ジョセフ・ジョースター誕生秘話より引用)
驚くべきことに、波紋使いをスタンド使いが見ると、ハーミットパープルのようなイバラの蔓、「生命エネルギー」のパイプラインが見えるという。
無論、すべての波紋使いがそうとは言っていないが、「生命エネルギー」はスタンド使いの力の源泉である「知性」を精製したものであるので、高度な波紋使いはスタンドに近い能力ということになる。
そして、上記の荒木先生のコメントはもう一つのことを示唆している。
波紋や回転の技術、トニオさんの料理技術など一見超能力かのように超越した技術はスタンド能力と大きな差がない、ということである。
ジョジョ世界において、超能力やそれに迫る技術は等しくスタンドのように描画されるのである。
波紋の呼吸による「生命エネルギー」の運用とジョセフと世界をつなぐ情報のラインこそがハーミットパープルであるということが分かった。
ジョナサン・ジョースターのスタンド
では、これとDIOが使った仮称ハーミットパープルがどう結びつくのか?
ここでJOJO A-GO!GO!にてこの仮称ハーミットパープルが「ジョナサンの肉体が発現させたスタンド」と説明されているのである。
単純に仮称ハーミットパープルはジョナサンのスタンドなんだ!とすると今度はなんでジョナサンのスタンドがジョナサンの死後にまだ残っていて、しかもDIOが使えるのか?ということになるのでもう少し整理する。
JOJO A-GO!GO!ではジョナサンのスタンド、ではなくジョナサンの肉体が発現させたスタンド、と説明している。
つまり、正確には仮称ハーミットパープルはジョナサンのスタンドではないのである。
ジョナサンは波紋使いでしかなかった。
しかし、ジョナサンはツェペリさんも驚くほど、波紋の修行をする前から波紋に適性を持っていた。
それは生来のものだったのか、ディオとの死闘がそのようにさせたのか不明である。
が、事実波紋を学ぶ前から、触れた木の枝を活性化させ花咲かせるほどに溢れる「生命エネルギー」を放出していた。
恐らく生前のジョナサンをスタンド使いが見たとしたら、ジョセフと同様にイバラの蔓のビジョンが見えるはずである。
ジョセフの波紋技術と情報を操る力がハーミットパープルになったように、ジョナサンの肉体の波紋適性が仮称ハーミットパープルの要素であることは間違いない。
DIOは無論、波紋を使うことはできないが、ジョナサンの肉体が自然に行なっていた「生命エネルギー」の循環をDIOは「吸血鬼のエキス(extract)」で無意識下に行なっていたのである。
結論を述べる。
ジョナサンの波紋適性の肉体を下地にして、DIOが「矢」によりザ・ワールドを発現することで、連鎖的にジョナサンの肉体が発現したスタンドが仮称ハーミットパープルである。
ジョジョ世界において、血縁や「運命」を共にするもの同士の中では強烈なシンクロシニティ(共時性)が演繹的に発生する。
簡単に言うと、よく言うシンクロシニティは偶然の一致に意味を見出すものであるが、ジョジョ世界では血縁関係者が強力な「運命」の力が作用した時、必ず血縁者に同じようなことが起きるのである。
DIOがスタンドに目覚めた際にジョセフ、承太郎、仗助がスタンド能力を開花させたように、マッシモ・ヴォルペとトニオ・トラサルディー、プッチ神父とウェザー・リポートと血縁者のスタンド発現からスタンド使いに目覚める例は多い。
そして、ジョナサンとディオは奇妙な友情で結ばれ、最期に「ふたりの運命は完全にひとつになった」存在である。
そのディオがザ・ワールドを発現したことをきっかけに運命が作用し、ジョナサンの肉体は波紋適性の下地をもとにして仮称ハーミットパープルを発現させたのである。
DIOにとってはジョナサンの肉体に馴染む一環で仮称ハーミットパープルも扱っていたのだろう。
なお、既にザ・ワールドを発現させているDIOはスタンドの扱い方に慣れており、仮称ハーミットパープルによる念写もカメラを壊さずに行えていたようだ。
ジョナサンの肉体に馴染む、つまりDIOの支配が完全になるにつれて仮称ハーミットパープルは消えてしまったのか、それともザ・ワールドの能力検証に夢中で忘れてしまったのか、その後のことは不明である。
また、外伝小説、西尾維新のOVER HEAVENにおいて、エンヤ婆がDIOの使う仮称ハーミットパープルを明確にハーミットパープルと呼んでいる。
むしろ、ジョナサンの肉体のスタンドこそがハーミットパープルであり、孫のジョセフも同じか似たような能力であろう、と述べている。
この外伝小説もジョジョ愛と考察に溢れており、一考に値する。
血縁のスタンド使いはスタンドが似ているのか?というと微妙なところだ。
承太郎のスタープラチナと徐倫のストーン・フリーは似ているが、プッチ神父のホワイトスネイクとウェザー・リポートのウェザー・リポートは似ていない。
マッシモのマニック・デプレッションとトニオさんのパール・ジャムは人体の化学反応を爆発的に増大する点では似ている。
エイペックス兄弟のショットガンNo.1とNo.2も名前だけ似ていて中身は似ても似つかない。
ちなみにジョナサン、ジョセフ、そしてホリィのスタンドが植物型で能力が似ていることには明確な理由があるが、それは別記事で考察する。
ザ・パッションと波紋の奥義
外伝小説の例を上でも出したが、もう一つ外伝小説からこの仮称ハーミットパープルに対する説がある。
舞城王太郎のJORGE JOESTER内で、ジョナサンとDIO2人の肉体にはザ・パッションとザ・ワールドの2つのスタンド能力が備わっている、と描かれているのである。
ザ・パッションも別項にて考察するが簡潔に説明すると、「本体の血縁者の未来予知をする」能力である。
茨の冠の形状をしたスタンドで、仮称ハーミットパープルのことである。
JORGE JOESTERは舞城王太郎のオリジナルスタンドが多数登場し、トンデモな内容であるがこのザ・パッションは彼のジョジョ愛の結晶と感じる。
まず未来や現在・過去を探知するスタンド能力は大抵において「本体の運命」の枠内でしか能力を発揮しない。
ディアボロのキング・クリムゾンやジョセフのハーミットパープルもこの制約内である。
逆にこの制約があるからこそ、十数秒先の未来を見たり、物理的な距離を無視して探知できるのである。
つまり、ザ・パッションの能力の射程距離の「本体の血縁者」というのは、この制約と、ジョジョ世界の「血縁者間の運命作用」を上手く使っていると言える。
次に他人の未来予知であるが、この能力者は作中で2人しか登場していない。
それは5部に登場するサルディニア島の占い師と、1部に登場するトンペティ老師である。
どちらもスタンド使いといってもおかしくない能力者、技術者である。
特にここではトンペティ老師に着目したい。
トンペティ老師は相手の手を握ることで、その「生命エネルギー」の波長から死の運命がいつどのように訪れるかまで予知する。
トンペティ老師がチベット山脈の波紋一族の最高指導者であることから、この未来予知は波紋技術の最奥義に当たるかもしれない。
そして、ジョナサンはツェペリさんから深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)により全生命力と波紋パワーを受け継いでいる。
ジョナサンはこの受け継いだ力でトンペティ老師に迫る波紋パワーを得ている。
このジョナサンの肉体が未来予知というザ・パッションの能力を発現するというのは非常に頷ける。
DIOがジョセフと承太郎を念写したシーンも実はハーミットパープルではなくザ・パッションによる未来予知念写だったと説明もできる。
まとめ
以上をまとめる。
まずザ・ワールドの初期設定は全てのスタンドを使う能力だった説は情報の参照元が不明な噂である。
次に、荒木先生曰くジョセフのハーミットパープルは波紋の影響と情報を扱う能力、そしてナビゲーターという役割から生まれた。
そして、仮称ハーミットパープルはジョナサンの肉体が発現した能力である。
これらから、仮称ハーミットパープルはジョナサンの波紋を遺した肉体が、DIOのザ・ワールドの発現に影響されて発現したスタンド能力である。
その能力は波紋の奥義、未来予知。
ジョセフとジョナサンは血縁であるため、ビジョンと能力が似ている。
考察は以上になります。
いかがだったでしょうか?
みなさんの考えもお聞きできたら嬉しいです。
出典:荒木飛呂彦原作 集英社出版 ジョジョの奇妙な冒険
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